今年に入ってすぐ実印が欠けてしまい、運気UPするという噂の「山本印店」で作り直すことに決めた。
ただ、この山本印店は誰でも作ってもらえるわけではなく、一日5~6人程度、しかも、月~木の12時~電話が繋がった人のみ作ってもらうことが出来るという不思議なはんこ屋さんなのである。
大体、話し中か「混雑」のアナウンスが流れ、12時10分頃になるとfinish。flyingすると「12時にかけ直して下さい」と言われる。
運よく繋がった人は、翌日、持っているはんこを全部持参するようにとの指示。
なんでも店主の山本桃仙さんは、九州の炭鉱の出身で、子供の頃、石炭を運ぶトロッコで遊んでいて、片足を切断しなきゃならないほど大怪我をされたそうだ。
医者が腐って行く足を切断しようとすると、お母様が「天国に行って足がないと遊ぶことが出来ない」と拒否、そのまま地下の霊安室へと運ばれた。
すると、地下の涼しさが功を奏したのか、足の腐敗が止まり、突然、桃仙さんの意識が戻ったという。
どうやら、この時の臨死体験がきっかけで、不思議な能力(霊感)が働くようになったらしい。
その後、小学校を卒業した桃仙さんは、印鑑彫なら足が不自由でも出来るだろうと、お姉様の嫁ぎ先の東京のはんこ屋さんで丁稚奉公をすることに。
それからというもの、印相学を使って独自の感性で工夫を凝らした【桃仙文字】なるはんこを持つと「開運する」とやら、はんこを見てのアドバイスが「当たる」とやら…、と評判になり、政財界人、芸能人を始め、全国各地から依頼が殺到するようになった。
というわけで、このはんこ屋さん、半年から一年毎日電話しても全く繋がらない人もいるほどの盛況ぶり。
さて、かくいう私は…。
苦節2ヶ月のとある休日。
諦め半分、いつものようにダイヤルをする。
すると、突然呼び出し音!時計を見るとまだ12時2分!もしや!
はんこ屋さん「はい、山本印店です」
私「あの…、はんこをお願いしたいのですが…」
はんこ屋さん「それでは、明日来て下さい」
ヤッター!思わずガッツポーズ!
翌日、山本印店を訪ねると、一人鑑定中、一人待ち人。三畳ほどの狭い店なので、全部筒抜け。ここで聞こえる話にも意味があるそうなので、遠慮なく聞かせてもらうことにした。
そして、いよいよ私の番。
桃仙さんが私のはんこを見て「非の打ちどころのないほど綺麗なはんこだ」「さて、そんなはんこが何故欠けたかというと…、」と、その意味を教えてもらうことが出来た。
お代は、実印、銀行印、認印の3本セットで23,000円。法人印は1本23,000円~。良心的!
動物、石はNGだそうで、本柘植での手掘り。仕上がりは3か月後。
この度、桃仙さんのお人柄にちょっぴり触れて…、人の人生の折々にかかわる大事な仕事という意味では、不動産屋さんもはんこ屋さんも同じだな、と思った。
帰り道…、お腹が空いた。
山本印店の真向かいに「ビストロ喜楽亭」という老舗のカレー屋がある。
16~7年ぶりに入った。こちらも変わらずの盛況ぶり。
山本印店にご縁のあった方、是非、ご賞味あれ!
(桃仙さんに「貴方は書くといい」と言われたので調子にのっての長文。お許し下さい)